エッセイ(車椅子の視線から)

 ・・・ 2008年 7月〜2009年 3月 ・・・



 
秋茄子は嫁に食わすな? 
雷嫌いの犬 
節約、わが家の場合
テラスの掃除






○ 秋茄子は嫁に食わすな?

昨日の夜は秋刀魚(さんま)だった。和さんが行きつけの店で秋刀魚を見て、「今夜は秋刀魚を食べよう!」と買ってきたのだ。秋刀魚は炭で焼くのが美味しいからと、裏庭に出て七輪で炭をおこして焼いてくれた。夕飯はこちらも旬の秋茄子(あきなす)の味噌汁付きである。茄子は和さんの菜園で採れた自家製である。「家で野菜を作っていると、食べたいときに必要な量だけ採ってくればいいので、いつも新鮮な野菜が食べられ、しかも経費が安い」と和さんが笑って言う。金さんは作ってくれたものを頂くだけだから何も言えない。
焼きたての旬のサンマも美味しかったが、秋茄子の味噌汁の味が何とも言えない良い味だった。ちょうどテレビのニュースで、落語「目黒のさんま」にちなんだ「目黒のさんま祭り」が東京のJR目黒駅前で開かれ、岩手県の宮古港で水揚げされた旬のサンマ6000匹の焼きたてが無料で振る舞われ、家族連れなど2000人以上が列をつくったと報じていた。
金さんは、美味しい秋茄子の味噌汁を頂きながら、古くから伝わる
「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉を思い出した。そして、
「憎らしい嫁に美味しい秋茄子食べさせるのはもったいない」という
姑の意地悪からきたもの
「体を冷やすので食べ過ぎるのは体に良くない」という姑の親切心
からきたもの
「秋なすは種子が少ないので子種がなくなる」という言い伝え
この3種類の解釈があるという、真の言葉の意味をはかりかねていた。
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○ 雷嫌いの犬


 わが家の愛犬ジョンは大の雷嫌いである。毎日妻の和さんが散歩に連れて行くのだが、遠くで雷の音が聞こえると、もー大変、引き綱を引いて急いで家に帰りたがる。帰ると自分の犬小屋の一番奥に入ってうずくまって散歩の後の餌も食べようとしないという。
 今年は8月雷雨がやけに多かった。この夏、今までの記録を塗り替えた所が多い集中豪雨で、家のある北埼玉でも深夜まで雷雨に悩ませられることもあった。
 家では、ジョンの他に3匹、併せて4匹犬を飼っているが、雷を恐がるのはジョンだけである。他の3匹は雷がいくら鳴っても稲妻が走っても平気である。むしろ車椅子の生活をしている金さんの方が雷嫌いになったくらいである。ジョンの飼い主だった親戚の老夫婦が、およそ一年の間に相次いで亡くなった。飼ってくれる人がいなくなったジョンが、わが家にもらわれてきたのは今年の春のことである。
 ジョンがなぜこれほど雷を怖がるのか?それはわからない。ただ、インターネットで調べてみると屋内で飼っている犬でも、雷が鳴ると飼い主にすり寄って震えている犬もいるという。わが家の4匹の犬はすべて屋外で飼っているので、ジョンが他の犬と同じように、雷に慣れてくれる事を願うばかりである。
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○ 節約、わが家の場合

 ガソリンの高騰に始まった物価の値上がりが我々庶民の家計を直撃している。このところの猛烈な値上げラッシュで、ただでさえ暑い夏が余計暑く感じられる。和さんが行くスーパーでも、パン、豆腐、魚、肉、バターなどの乳製品などが軒並み値上がりしているし、そればかりか、値上がりしていない物も食品の製造メ−カーがちゃっかりグラム数を減らして実質値上げしているというから驚く。わが家のように、収入が年金だけの家計では一体どうすればいいのだろう。やりくりを任されている和さんのような主婦には頭の痛い辛い夏である。
 幸いわが家では主食のお米が家の田んぼで採れるので、最近パンの回数を減らしてお米を食べる回数を増やした。高額の農業用機械が無いわが家では米作りも頼んでやってもらっているので当然赤字である。それでも、美味しいコシヒカリが食べられる喜びは田んぼを持っているの者の強みだ。毎日食べる野菜も、和さんの菜園が今年豊作なので助かっている。時には近所の主婦同士でお互いの菜園で採れる物を融通しあうこともあるようだ。
 また、金さん&和さん夫婦は、このほかにも今年話し合って家計の節約に乗り出した。手始めとして、更新時期が迫っている自動車から始めた。旅行とお出かけ用に使っていたホンダの旧型オデッセイと普段の買い物などに使っていた三菱の旧型のeKワゴンの二台を下取りに出して、トヨタのカローラ フィールダー一台にした。これでガソリン代と保険料、税金が節約できる。
 リハビリにもおおいに役立っている金さん&和さんのドライブ旅行も、泊まりはバリアフリーの部屋と温泉のある「かんぽの宿」中心に変えた。また、ドライブによる夫婦でのお出かけの回数も減らすなどの節約にも着手した。しかし、不自由な車椅子の生活をしながら、日々の挑戦でなんとか楽しい生活をしたいと願っている金さんにとっても、金さんの介護で自由に家を空けられない和さんにとっても、節約だけでは面白くない。そこで、金さん&和さんは身の丈に合う楽しい暮らしを見つけるために、二人で知恵を絞っている。

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○ テラスの掃除 2008年 7月 1日(火) 晴


 家のコンクリートのテラスが少し薄黒く汚れて見苦しくなっていた。家を新築してから丸4年も経過しているのだから、テラスがカビなどで汚れるのも無理もないように思う。和さんはあまり気にならない様子だったが、金さんは今年になってから気になっていた。しかし、自分では掃除ができないので、雨の日などに「ブラシを使って掃除してみたら」と、和さんに言ってみるのだった。実はコンクリートの汚れといっても、風呂用のカビ取り剤などをまいて、ブラシでごしごしやれば簡単に取れるだろうと軽視していたのが真相である。和さんもそう思っていたらしく、実際に雨の日に合羽を着てブラシでごしごしやってみた。けれどもそれでは少しも効果がなかった。
そこで、新築の工事を担当した○○工務店の社長にメールで相談した。

○○工務店 社長 様

いつもお世話になりありがとうございます。
田植えも終わり5月も6日になりましたが大型連休中はどうされていましたか?
金さん&和さんは連休中はどこも混雑するので、家でのんびりしていました。

さて、一つ教えてください。
テラスのコンクリートの所がカビでしょうか、掃いても、水で洗っても落ちず
だんだん黒ずんで来て見苦しくなってきました。
これを落とすにはどうすれば良いのでしょうか?
インターネットで調べると、コンクリートクリーナーのようなものを使い素人が
やってかえって黒くなったという話もあります。
テラスの写真を添付します。お天気なので手前は陰が写っています。

綺麗にしてもらうには専門の業者に依頼しなければならないのでしょうか?
和さんはあまり気にしていませんが金さんの方が気になっています。
梅雨に入る前にテラスを綺麗にしたいので、お忙しいところ済みませんが
よろしくお願いします。


工務店の社長から返事のメールがきた。

金子 様

こんにちは、お世話になっております。
弊社も今年は、8連休にしました。
母の一周忌・田植え・打ち合わせなどで、あっという間に
連休最終日になってしまいました。

写真確認しました。専門の者に見せてみますので、
回答が出たら連絡します。


金子 様

こんにちは。
クリーニング業者に確認してみました。
とりあえず、高圧洗浄をしてみたら、と言われました。
近日中に私の方で一度洗ってみます。
予定が決まりましたら、ご連絡いたします。
よろしくお願い致します。

それからしばらくして、工務店から前社長と若い人の二人でテラスの清掃に来た。高圧洗浄機ではなく家庭用の機械を持ってきてしばらく掃除をしていたが、「これじゃ駄目だ」と、早々に引き上げていった。

金子 様

お世話になっております。
うまく落ちなかったようで、すみませんでした。
今回、高圧洗浄に使ったのは、家庭用なので水圧が低かったようです。
今度は、塗装屋さんが使用しているもので、チャレンジしてみます。

金子 様

ハウスクリーニングの方に確認したのですが、黒くなっているものは
基本的には、洗浄で落ちるそうです。
保護するという考えから見たら、材料名は調べていませんが
コーティング材があります。
今度、伺う時までに調べておきます。

6月30日に工務店から「午後高圧洗浄にうかがいます。」と、電話があり、3時過ぎに若い社員がやってきて高圧洗浄を始めた。さすがに業者が使っている高圧洗浄機の威力はすごい。テラスの汚れがみるみるうちに落ちていった。

ガンコな汚れを洗い流すには高圧洗浄機が効果的で環境にもやさしいという。だが、問題もある。高圧で洗浄するのでコンクリートの表面の膜が噴射で飛ばされてしまうことだ。家でも高圧洗浄機の掃除の翌日テラスに出てみた和さんがそれを見つけた。次に猫のマリリンがそれを実証して見せた。マリリンはテラスに出てひっくり返って背中のごしごし具合を喜んでいるように見える。それを見て金さんも納得した。テラスのコンクリートの薄い膜が高圧の洗浄で飛ばされてザラザラしているのだ。

テラスの清掃がひとまず終わった。だが、これですべて解決したわけではない。やはり問題も残る。いろいろ試せるから人生は楽しい。「次は和さんが提案するグリーンの人工芝を試してみよう」と、金さんは思った。


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