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これは単なる闘病記ではない。二度の、致命的とさえいえる脳出血に襲われながら、持ち前の頑張りと素敵な家族の応援を受けて、病を克服し車椅子で職場復帰した、都政人「金さん」の半生記である。 実録であるだけに、発病時の状況、復職に向けての懸命なリハビリテーション、家族の献身的な愛情と関わり、記されたひとつひとつの出来事が、その場に居合わせたかのように読者を引き込んでいく。 特に心をとらえるのは、後遺症の四肢麻痺で車椅子生活になりながら、復帰の際に先輩や友人から受けた思いやりに感動し、その感謝の気持ちを自分と同様な苦しみを持つ人、またその家族たちの支援に向けていくところである。その支援のやりとりの中に金さんの人柄を見ることは勿論であるが、都政人としての長い経験がこういわせるのだとなというところを見つけて、ひそかに誇らしく思うのは私だけではあるまい。 重度の障害を持った身が、何ができるかを考え、独力でホーム・ページ「車椅子の視線から」を立ち上げ、インターネットライフの中でボランティア活動を実践している金さんの姿は、健常な我々に対する大きな問題提起でもある。「不自由な自由人」金さんの生き様は、なんらかの障害を持ちながら前向きに生きていこうとする人たちに大きな力を与えてくれるばかりではない。日々老いていく憂鬱に悩み意気消沈しようとする我が身をも、強く強く勇気づけてくれた。この書と金さんに改めてお礼を申し上げたい。ありがとう 金さん。 (東京都収用委員会事務局長 平井健一)
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