私の幸運
    
 私は1985年の一回目の脳出血の後、リハビリテーションに関する本を読んでから、それまでのリハビリテーションについての理解と考え方が一変しました。それが良かったのでしょう。
 1994年に二回目の脳出血で倒れ、間一髪生還して車椅子の生活になった時も、落ち込まずに現実を素直に受け入れることができました。そして「四肢麻痺で車椅子の生活をする自分に何が出来るか?」と自分の境遇をポジティブ(積極的・肯定的)に考えられるようになったのです。
 その積極的な姿勢が私に幸運をもたらしてくれました。1995年の暮れにリハビリテーションのために入院していた東京都リハビリテーション病院で、発売されたばかりのウィンドウズパソコンに運命的な出会いができたのです。考えてみるとウィンドウズパソコンがこの時期に日本で発売されたのも幸運でした。私が早くからパソコンに興味を持っていたのも幸運でした。

 私は自分のリハビリテーションの進行具合から、「車椅子の生活が避けられないかも知れない!」と心の中で観念し車椅子の生活になったときの生き方を模索していました。
 そんな時、発売されたばかりのウィンドウズ95パソコンを、東京都リハビリテーション病院の私の担当になった理学療法士に見せてもらったのです。
 マウスの操作で高速に動作させることが可能なウィンドウズ 95パソコンを見たとき、私の心に閃くものがありました。
 その日から退院が待ち遠しくなり、退院すると妻に無理をお願いして早速ウィンドウズ95パソコンを買い、本を読んで独学で特訓を始めました。

 パソコンに興味を持っていたとはいいながら四肢麻痺で車椅子の生活です。人に言えないような苦労もたくさんありましたが、特訓の成果が実を結んでパソコンが使えるようになり、やがてインターネットも利用できるようになりました。
 パソコンを電子メールやホームページの閲覧などインターネットに利用してみて、
「これからはパソコンを使ってコミュニケーションができる!」と、車椅子生活の未来にほのかな光明見つけて興奮したことを今でも忘れません。

 人生には不思議なことがあるものですね。
 二度も脳出血で倒れながら落ち込まずに、ポジティブ(積極的・肯定的)に生きているごほうびでしょうか?幸運の女神の方からやってきてくれたのです。
 今の「インターネットライフ」という自分流の生き方を見つけることができたのも、「車椅子の生活が避けられないかも知れない!」という50代の私には厳しい現実を、素直に受け入れたおかげではないかと感謝しています。
 そして、退職金をつぎ込んで夫婦で建てたバリアフリーでユニバーサルデザインの新居でインターネットライフをしながら、ささやかなボランティアをしたり、出来る範囲で社会貢献ができることに生きがいすら感じている自分を本当に幸運だと感謝しています。

現実を素直に受け入れることって大事ですね。私のように二度も脳出血で倒れ車椅子の生活になってしまう者だけでなく、元気な人が事業に失敗したり、リストラで会社を辞めなくてはいけなくなったり、思わぬ災害にあい元のような生活ができなくなったりした場合なども、同じことが言えると思います。辛いでしょうが現実を受け入れることで、次にどうするかを前向きに考える心の余裕が生まれるのではないでしょうか?