パソコンとリハビリテーション  


 目 次
 パソコンはリハビリテーションに役立つか?

 インターネットとリハビリテーション
     ・・心のリハビリテーションのために!・・



 ◇ パソコンはリハビリテーションに役立つか?

 

結論からいいましょう 私の場合多いに役に立っています!

何故かと言いますと、パソコンを使うのは手だけではありません。
脳がパソコンをつかうのです。ですから脳のリハビリテーションに役立つのです。
私が入院してリハビリテーションの指導をしていただいた都立大久保病院、東京都リハビリテーション病院でも、作業療法の訓練の時にパソコンやワープロを使っている人がいました。鉛筆で字を書けないのでパソコンやワープロを使う訓練をしているようにその時には見えたのですが、今思うとそれだけではありませんでした。 パソコンにはリハビリテーションのこんな効能もあったんですね。

ただ、私が入院中に見たパソコンやワープロを使う訓練はごく初歩的なものでまさに機能回復訓練と呼ばれるものでした。ですから、もう一歩進んだリハビリテーションに本当に役立てるためには、退院して自宅に帰ってから、先ずメールの交換ができるようになるのがいいと思います。

私も退院してから、ウィンドウズパソコンを買いました。(1996年)
独学でパソコンに取り組むのは、苦労もたくさんありましたが、何とかパソコンが使えるようになり、やがて自分のホームページを立ち上げることができました。
今では、インターネットを使ってメールの交換や掲示板での交流をしている人がたくさんいます。
それだけではありません。身体障害者の私にとって大きな課題だった情報の収集・発信にもおおいに役立っているのです。

私のリハビリテーションはパソコンに支えられていると言っても言い過ぎではないでしょう!!

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Q パソコンはリハビリテーションに役立っているだろうか?

 

Aー1 入力にキーボードを使うので指の訓練に役立つている

1996年に退院後はじめてウインドウズ95パソコンを使い始めた頃はキーボードがうまく打てなくて本当に参りました。キーボードを打つときキーボードから指が離れないのです。だから「あ」と打とうとすると「あああああああああああああああ・・・・・」となってしまいます。元気なときは何も気にしなかったキーボードを打つのが、実はこんなに難しいものだとこの時はじめて知りました。キーボードって、打つタイミングと離すタイミングが微妙に関係していたのですね!

だから、脳幹部からの出血で後遺症も「四肢機能障害」と診断されていた自分には、パソコンはやっぱり無理かなあ・・・?と最初は思いました。 でも「ここで諦めては男がすたる」と続けることにしました。(内緒の話ですが、買ったパソコンを使わないで飾っておくにはもったいない値段だな! と思ったことも理由の一つです。)

とにかく、右手をどんどん使って慣れるより仕方がないと思って、毎日少しずつ使うことにしました。正直に言って、この時はパソコンを使うことでこれほど右手が良くなるとは自分でも思っていませんでした。勿論パソコンだけで右手の機能が回復してきた訳ではないとは思います。

ですが、パソコンを使うことで前向きな意欲が生じ、それがいろいろな面で相互に作用しながら脳と身体に良い影響を与えたことは確実です。

この頃ではキーボードにもだいぶ慣れてきて、あれほど感じた右手の重さも前ほど気にならなくなってきましたし、キーボードを打つスピードもちょっぴり速くなったように思います。(自分ではそう思うのだが、健康な人から見ればやはり相当遅い。)

 

Aー2 パソコンを使うと頭を使うので脳の訓練になる

パソコンで作業をすると頭を使うことが実に多いので良い訓練になります。

作業の前、作業中、作業後の点検、いわゆる「Plan」「Do」「See」のすべての場面で頭を使うからです。これが脳の活性化に役立たないはずはありません。パソコンの訓練が功を奏して、最近ではいろいろな面で意欲が出てきたように自分でも思います。

 

 ※ 脳関係の何かの本で「手は身体の外にでている脳である」と言う意味の文章を読んだ
   ことがあります。 
   私のパソコンを使う脳のリハビリテーションの発想はそこからはじまりました。

 

Aー3 キーボードは両手を使わなければ打てないものがあるので両手の訓練にもなる

正直の所始めのうちはこれが一番困りました。1度目の脳出血(片麻痺)の時と違って、今回は両麻痺です。 トラブルが起きたときに「Ctrl」「Alt」「Delete」キーを同時に押しなさい。とパソコンの本に書いてある時など一人ではキーボードを押せないのでどうしようもありませんでした。そんなときは妻の手を借りて二人でキーボードを打ったこともあります。そのうちに右手だけでキーボードを操作する方法なども本を読んで少しずつ覚えました。また、左手も少し改善してきたので左手を机の上に固定させて指を使う方法を覚えました。今では、いざという場合には何とか一人でも「Ctrl」「Alt」「Delete」キーを打てるようになりました。

 

Aー4 パソコンを使っていると危機管理の訓練にもなる

ウインドウズ95パソコンを使っているとき、時々ハングアップ(フリーズ)しました。最初のうちは本当にびっくりしました。家に一人でいるときなど心臓が飛び出すんではないかと思ったほどです。そのうちにトラブルにも慣れ、これはウインドウズ95の特徴(?)であると割り切ることにしました。パソコンの雑誌にもウインドウズ95のトラブル対処の方法がいろいろ載るようになりました。

また、トラブルの経験を積むことでだんだんと冷静に対応することが出来るようになりました。(※そうなるまでには失敗も多い。一度など、妻にパソコンメーカーの「ユーザー相談室」に聞いてもらい(言語障害があり自分で電話で説明できなかった)その指示を私が妻に聞いてキーボードを打ったこともあります。この時は結局うまくいかなくてノートパソコンをメーカーに妻に持ち込んでもらい再セットアップをしてもらって解決した。)

※ ウインドウズ98になってからハングアップ(フリーズ)の回数が減りだいぶ安定してきた。

※ ウィンドウズXP(Windows XP)になってハングアップ(フリーズ)の回数が更に減りました。
                                           (2003.1月追加)

 

Aー5 パソコンは必要なことに使うので飽きがこない

病院でやる「リハビリテーション」は訓練時間がだいたい一回2〜3時間が限度です。それ以上かりにやることができても疲れるし飽きてきます。ところがパソコンは好きなことに使っているので飽きがきません。(勿論休みながらやる必要があるが・・・時には夢中になって3,4時間続けて妻に怒られることがある。)

 

☆ パソコンは中高年にとっても、障害者にとっても、自分を飛躍させるドラエモンの「どこでもドア」として使えるのではないだろうか? インターネットが盛んになり特にその感が強くなった。

 

Q パソコンは健康に良くないのでは?

 

Aー1 長時間パソコンを使っていて電磁波が健康に影響がないか心配が少しある

電磁波がどれくらい健康に影響があるか良く知りませんが、全く影響がないとはいえないのではないでしょうか? だからあまり使いすぎないように休み休みつかいましょう。

※ 電磁波の健康影響に不安をもっていらっしゃる方、電磁波について詳しく知りたい方は、
   BEMSJ電磁波健康影響講座 (三浦 正悦 氏のホームページ) をご覧ください。

 

Aー2 パソコンを長く使うと目が疲れる。涙が出てくる

確かに長く使っていると涙が出てくることがあります。目薬を使う方法もありますが、休憩を頻繁に取るようにした方が良いでしょう。

 

Aー3 長く使うと肩が凝る

私の場合確かに肩が凝るときがあります。 でも、私は右手が宙ぶらりんの状態でないとキーボードが打てないので仕方がないと思っています。

体幹がもう少ししっかりしてくれば違ってくるのでは?と期待しているのですが、とにかく無理をしないで行こうと思います。 (※ 6年すぎた今では肩こりもあまり感じなくなりました。)

 「1時間パソコンを使ったら10分間は休むようにしよう!」

 

Aー4 パソコンに触れないでいると何だかさびしい。
    「テクノ依存症」になるのではないか心配である

パソコンをやりすぎないために、私は原則として「午後7時を過ぎたらパソコンに触れない」ようにしています。 また、夕方5時以降は「パソコンに触れない日」も作っています。

と言うわけで「テクノ依存症」は今のところ心配ないようです。

 

Aー5 パソコンを使いすぎると内向的になるのではと心配である

いわゆる「おたく」になるのでは?という人がいます。 何を隠そう私は「パソコンおたく」です。でも、私はそれを誇りに思っています。 勿論内向的ではありませんね!

 

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 ◇ インターネットとリハビリテーション

 

Q インターネットは“心のリハビリテーション”に役立っているか?

私の場合には、電子メールやホーム・ページの掲示板による交流をやるようになってから、大勢の友人と意見交換をしたり情報の受発信ができ、充実した生活をおくれると共に生きがいも生まれました。

リハビリテーションの最大の目的が「障害のある人の生きがいづくり」にあるとすれば、インターネットは私にとって一番役だったといえるでしょう。

 

Aー1 情報不足による「孤立感」の不安から解放される

人間が不安になることの一つに「情報が入らない」ことがあげられます。障害者になって一人では出歩くことができなくなると、新聞や本、テレビ、ラジオなどが主な情報源になります。しかし、これは受信するだけの情報にすぎません。情報は受けるだけでなく自分の意思を発信することも重要です。つまり双方向の情報のやりとりがあってはじめて情報社会といえるのではないでしょうか? 直接あっての話し合いや電話(まさに双方向の情報の受発信で)での情報の授受ができない障害者には、インターネットは外界とつながるオアシスの役割を果たしてくれます。 

車椅子生活になってから、一番不安だったのが交際が減って友人が減ることでした。
病気の前にはアフターファイブのつきあいも、休日のゴルフもたまにやっていたので、それが後遺症のためできなくなるのはわかっていても一抹の寂しさがありました。

それが、車椅子生活になって生き方を変え、自分にできそうな趣味(パソコンでインターネット)を見つけ元来の「凝り性」にものを言わせて「自分にできるもの」にしてから、状況が一変しました。

インターネットとホーム・ページのお陰で、メールや掲示板をつかっての双方向の情報の受発信が可能になりました。砂漠の中でオアシスを見つけた時はこんな感じでしょうか?

また、車椅子のため出かける機会が少ないので情報不足で困ることもありましたが、インターネットの関連サイトを見たり、Daily Mail News やメーリングリストに登録してメールで毎日ニュースや仕事、趣味の情報を見ることが出来るようになりこれも解消しました。
今、自負しているのですが、むしろある分野に限れば、健康な人より多くの情報に接することができるようになったかもしれません。

これにより、「情報不足により自分が社会から孤立しているのではないか?」という不安がほとんどなくなりました。

 

Aー2 「IT革命の時代の最先端を走っている!」と言う自己満足(?)が得られる

私がホーム・ページを持とうと決めたのは1997年の夏でしたが、タグ(HTML)の勉強や、ホーム・ページの構想、準備に思ったより時間がかかって実際に開設できたのは、その年の12月クリスマスの直前になっていました。FTPでファイルを転送した後でインターネットに接続してネットスケープで自分のホーム・ページを見たときの心の奥から湧いてくるような感動は今でも忘れられません!

ホーム・ページは一度登録すると更新はそれほど難しくはありませんでした。「タグ(HTML)を知らなくてもホーム・ページができる!」という宣伝が、広告でよく目に付きますが、更新を考えると勉強しておいて本当に良かったと思います。 「急がば回れ」 ということわざはこいうときに使うのでしょうか?

いまもだいたい毎週末に更新していますが、タグを勉強したお陰で苦労することは今のところあまりありません。 タグを全然知らなくてもホーム・ページ作成ソフトを使えばホーム・ページは確かに出来ますが、それを更新していくのはそれほど楽ではないことを覚えておきましょう。

私の場合、ホーム・ページを見てくれる人のアクセス数が増えていくのが励みになって、アクセス数が20000人を超えた頃から「次はどこを更新しようか!」と更新の楽しみもでてきました。

 

Aー3 パソコンを使うことで「自信」が得られる

「58歳になっても、障害者でもウインドウズ98が使える、インターネットのホーム・ページも開設できた。」ということで、すごく自信がついてきました。

 「あきらめなければ いつか必ず出来る!」

という気持ちをこれからも忘れないようにしていきたいと思っています。

 

Aー4 知らない人と友達になれるし視野が広がる

昔パソコン通信をやっていた時も勤務する都庁の外の友人が増えましたが、今度、2度目の脳出血(1994年4月)の後インターネットをはじめホーム・ページを開設(1997年12月)してからは、知らない人から励ましのメールや時には相談のメールなどももらうようになりました。特に昨年(1999年)の秋にNHKの「生活ホットモーニング」に障害のある私とインターネットの友人3人が「男たちの復帰」というタイトルの番組で取り上げられ、あわせて「車椅子の視線から」のホーム・ページが番組で紹介されてからは、日本国内はもとより、外国に住んでいる人からもメールをもらうようになりました。

後遺症で障害が重くなり行動範囲が狭くなることにより友人が減るのではないか?と心配していましたが杞憂でした。インターネットをやるようになってから、むしろ今までよりも交際範囲が広がってきたように思います。 嬉しいことに、前からの友人も車椅子の私の生き方に共鳴してくれる人が増えています。

 「井の中の蛙大海」へ

今まで、私はどちらかというと「都庁」という「井の中の蛙」でしたが、二度の大病の後、教えられることが増えて人間的にも成長したような気がします。 やっと遅ればせながら「大海」へこぎ出すことができたのかも知れません。 

Aー5 インターネットの交流が「心のリハビリテーション」に役立っている。

パソコンでインターネットの交流(メール、掲示板、オフ会など)をすることで、友人との情報交換と心の交流が深まっています。

これは、障害のある人や高齢者で介護されている人だけでなく、家で介護していて普段交流の少ない人などにも心のリハビリテーションに多いに役立つのではないか? と思います。

心のリハビリテーションは、何も心を病んでいる人だけに必要だとは思われません。
現代のような
ストレス社会(※不景気で倒産やリストラにより、家庭や学校も崩壊するところも見られるなど不満がいっぱいの社会(私の解釈))では、誰にとっても心のリハビリテーションが必要ではないでしょうか?

 

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